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【眼科医監修】子どもの弱視とは?特徴・原因・治療法などをわかりやすく解説

子どもアイケアガイド #12

【眼科医監修】子どもの弱視とは?特徴・原因・治療法などをわかりやすく解説

2025.12.25

子どもの弱視は、早期発見と早めの治療がとても重要な「目の発達障害」です。しかし、幼児期の子どもは「見えづらい」と言葉でうまく伝えられないため、家庭で気づくことが難しく、発見が遅れることも少なくありません。弱視を放置すると、将来の視力や生活の質に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、子どもの弱視の特徴や原因、見分けるポイント、治療方法までをわかりやすく解説します。子どもの見え方に不安を感じている方は、眼科を受診する目安として参考にしてください。

目次
  1. 1子どもの弱視とは?
  2. 2弱視の種類と原因
  3. 3子どもの弱視を見分ける方法とは?
  4. 4弱視が治らなかったら?子どもへの影響とは
  5. 5子どもの弱視の治療方法
  6. 6子どもの弱視に関するよくある質問
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不二門 尚先生

1982年大阪大学医学部卒業。2019年より大阪大学大学院生命機能研究科特任教授に就任。小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

子どもの弱視とは?

子どもの弱視とは、視力の発達が障害されておきた低視力のことで、メガネをかけても視力が十分に出ない状態を指します。しかし、早期に発見し、早期に治療すれば改善することがほとんどです。

視力は、言葉や歩行などと同じように、生まれてから物を見ることで少しずつ発達する能力です。この視力の発達には臨界期(感受性期)があり、おおむね10歳頃まで続きますが、この期間を過ぎると治療に反応しにくくなります。この大切な時期に、強い遠視や斜視などの何らかの邪魔が入ることで正常な視力の発達が止まってしまうと「弱視」になります。

視力検査だけで弱視と判断するわけではなく、他に目の病気がないことを確認した上で、屈折検査や斜視検査などを総合的に判断します。視力検査が十分にできるようになる前に、弱視になる可能性が非常に高いと判断された場合は、予防的に治療を開始することもあります。なお、その子に合ったメガネをかけて1.0の視力が出れば弱視ではありません。

弱視の種類と原因

子どもの弱視は、原因や症状によっていくつかのタイプに分けられます。それぞれのタイプで治療法や発見のしやすさが異なるため、まずは特徴と原因を理解しておくことが大切です。

屈折異常弱視

屈折異常弱視は、遠視・近視・乱視などの屈折異常が原因で両目の視力が十分に発達しない状態のことです。特に遠視による弱視が多く、近くも遠くもピントが合わないため、メガネなしでははっきり見えません。近視の場合は近くの物は見えますが遠くがぼやけます。軽度の近視では弱視になることは少ないとされています。

不同視弱視

不同視弱視は、左右の目で遠視・近視・乱視などの度数に大きな差があることで、片方の目だけが十分に発達しない状態です。正常な方の目がしっかり見えているため、日常生活では不自由を感じにくく、周囲からも気づかれにくいのが特徴です。

多くの場合、片目ずつの視力検査や屈折検査で発見されます。原因としては遠視が最も多く、遠視が強いと鮮明な像を結べず視力が育ちにくくなります。

斜視弱視

斜視弱視は、斜視が原因で片方の目の視力が発達しない状態のことです。斜視とは左右の視線がずれている状態のことで、それぞれの目で違う像を見てしまうため脳が混乱します。混乱を避けるため、脳がずれている方の目の情報を抑制し、その結果、視力が育たなくなります。

もう片方の目は正常に発達するため、日常生活での違和感が少なく気づきにくい点が特徴です。このタイプも片目ずつの視力検査や屈折検査で発見されます。

形態覚遮断弱視

形態覚遮断弱視は、乳幼児期に外界からの視覚刺激が妨げられることで、形を見る能力(形態覚)が育たずに起こる弱視です。網膜に鮮明な像が届かないため、正常な視力が発達できなくなります。

主な原因には以下のようなものがあります。

  • 先天白内障
  • 眼瞼腫瘍(がんけんしゅよう)
  • 角膜混濁(かくまくこんだく)
  • 高度な眼瞼下垂(がんけんかすい)

また、乳幼児期に眼帯で目を覆う、あるいは片目を長時間ふさぐことでも起こる可能性があります。医師の指示がない限り、自己判断で目を覆うことは避けましょう。

子どもの弱視を見分ける方法とは?

子どもの弱視は、早期発見が治療の成果を大きく左右します。特に小さい子どもは「見えづらい」と自分から伝えることができないため、日常生活の中で保護者が注意して観察することが大切です。以下の行動が見られる場合は、早めに眼科を受診しましょう。

  • ものを見るときに目を細める、または顔を近づける
  • 視線が合わない、焦点が定まらない
  • 片目を眩しそうに閉じる
  • ものを見るときに顔を傾ける

屈折異常や斜視の検査は、市区町村で行われる乳幼児健診や眼科で受けられます。

弱視が治らなかったら?子どもへの影響とは

弱視は、6~8歳頃までの視力発達のピークを過ぎると治療が難しくなります。治療せずに成長してしまうと、いくらメガネをかけても視力が十分に出なくなり、後から取り戻すことができません。

十分な視力が得られないままだと、日常生活に不便が生じるだけでなく、将来の進路や就職にも影響が出ます。例えば、車や船舶の免許が取れない、視力基準の厳しい職業(警察官、消防士、競艇選手など)を目指せないといった可能性もあります。

そのため、弱視は「早期発見・早期治療」がとても重要です。子どもの目に少しでも違和感を感じたら、できるだけ早く眼科で検査を受けるようにしましょう。

子どもの弱視の治療方法

子どもの弱視の治療は、主にメガネによる視力矯正とアイパッチ療法(健眼遮閉訓練法)が中心です。

メガネによる矯正

メガネによる矯正は、正しいピントに合わせて視力の発達を助ける治療です。特に屈折異常弱視や不同視弱視では、まずメガネを使った治療から始まります。適切なメガネをかけ続けることで、視覚刺激が網膜に届き、弱視の改善が期待できます。

なお、メガネは朝から寝るときまで常に装着するものなので、つけ心地やサイズ感などの選び方にも気をつける必要があるでしょう。

アイパッチ(健眼遮閉)

アイパッチは、視力が正常な方の目を覆い、弱視のある目を意識的に使わせることで視力を発達させる治療法です。メガネだけでは視力の改善が難しい場合や、左右の視力差が大きいケースで追加して行われます。

なお、弱視の治療については以下の記事でも詳しく解説しています。具体的な治療法を知りたい方は、参考にしてください。

関連記事:【眼科医監修】子どもの弱視治療とは?治療の開始時期や治療後の対応も解説

子どもの弱視に関するよくある質問

子どもの弱視について、よく寄せられる疑問とその回答をまとめました。

弱視は発達障害ですか?

弱視は、目そのものの病気ではなく「視力が発達する過程で起こる障害」です。子どもの視力は6~8歳頃までに発達がほぼ完成するため、この時期までに適切な治療を始めれば、視力の改善が十分に期待できます。

しかし、視力が完成した後では、メガネやコンタクトレンズ、レーシック手術を受けても十分な視覚機能を得ることは難しくなります。つまり、弱視は早期発見と早期治療が非常に重要な症状です。

弱視の治療に補助金はある?医療費控除の対象ですか?

9歳未満の子どもが弱視治療を目的にメガネやコンタクトレンズを作製する場合は、健康保険が適用されます。補助金の上限額は40,492円(令和6年現在)で、その範囲内で保険負担分が支給されます。

また、多くの自治体では「こども医療費助成制度」が設けられており、自己負担分が返金されるケースもあるため、確認しておくとよいでしょう。医師の診断書に基づいて購入した治療用メガネは医療費控除の対象となるため、確定申告をする際は領収書を保管しておくことをおすすめします。

なお、弱視の治療における補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。補助金の条件や申請の流れを知りたい方は、参考にしてください。

関連記事:【眼科医監修】子どもの治療用メガネに活用できる補助金とは?条件と申請の流れを解説

まとめ

子どもの弱視は、目の成長が妨げられることで、メガネやコンタクトレンズを使っても視力が十分に得られない状態のことです。視力は6~8歳頃までに完成するため、この期間に早期発見と適切な治療を行うことが、将来の視力を左右します。

弱視を放置すると、車や船舶の運転免許が取得できなかったり、消防士や警察官など視力基準が厳しい職業を選べなくなったりする可能性もあります。治療はメガネやアイパッチを使った視力訓練が中心で、9歳未満であれば健康保険の補助や医療費控除を活用できるケースが多いため確認しておくと安心です。

日常生活の中でお子さんの視線や行動に違和感を覚えたときは、迷わず眼科を受診しましょう。「見え方の異常に早く気づくこと」が、子どもの将来の視力を守る第一歩です。

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