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【眼科医監修】子どもの近視は遺伝する?母親・父親からの影響とそのほかの要因を解説

子どもアイケアガイド #07

【眼科医監修】子どもの近視は遺伝する?母親・父親からの影響とそのほかの要因を解説

2025.12.25

「親が近視だと子どもに遺伝してしまう?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。子どもの近視は遺伝的要因と環境要因が関わっており、母親と父親が近視でも、対策すれば進行を抑制できる可能性があります。

本記事では、眼科医監修のもと子どもの近視のリスクや生活習慣との関係を解説します。効果が期待される新しい治療法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1子どもの近視は遺伝する?母親・父親からの影響
  2. 2子どもの近視は環境要因も関係する
  3. 3子どもの近視は何歳から?6歳未満で発症するケースも
  4. 4子どもの近視を治す方法はある?
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不二門 尚先生

1982年大阪大学医学部卒業。2019年より大阪大学大学院生命機能研究科特任教授に就任。小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

子どもの近視は遺伝する?母親・父親からの影響

子どもの近視には遺伝的な要因が関わっており、親が近視である場合、子どもも近視になるリスクが高まります。両親の近視の状態によって、以下のようにリスクの程度は変わってきます。

両親の近視の状態 子どもが近視になる確率
両親ともに近視 約5倍になりやすい(リスクが高い)
どちらか一方が近視 約2倍になりやすい(リスクが中程度)
両親ともに近視でない 基準(リスクが低い)

両親が近視なら子どもの近視リスクは高く、片方のみなら中程度、両親ともに近視でなければ低くなります。

ただし、親が近視であっても子どもが必ず近視になるわけではありません。遺伝的要因は近視になりやすい体質を決める1つの要素であり、環境要因との組み合わせで近視発症が決まってきます。

子どもの近視は環境要因も関係する

子どもの近視が発症する原因は遺伝だけでなく、普段の生活環境も関係しています。ここでは、子どもの近視に関わる環境要因を確認しましょう。

屋外活動の不足

屋外で過ごす時間が少ない子どもは、近視になりやすいことが世界的に確認されています。日光を浴びながら外で遊ぶ機会の減少が、現代の子どもたちの近視を増加させる原因の1つです。

子どもの屋外活動が少なくなった背景には、次のような要因が考えられます。

  • 習い事の増加
  • 遊び場の減少
  • スマートフォンやゲーム機の普及
  • 屋外で過ごしにくい環境(猛暑や大気汚染の影響)

現代社会では都市部での安全な遊び場の減少や、習い事の増加により室内で過ごす時間が長くなっています。また、屋外にいてもスマートフォンやゲーム機を使用していては、十分な効果は期待できません。

実際に一部の国では、学校の休憩時間に外遊びを義務化しているケースもあります。近視を防ぐためには、外で日光を浴びて遊ぶ時間を確保することが大切です。

近距離作業の増加

読書や学習など、近距離でおこなう作業時間が増えると、子どもの近視が進行しやすくなります。長時間の近距離作業は目のピント調節機能に負担がかかり、眼軸が伸びやすくなるからです。

人間の目は、手元にピントを合わせた状態が続くと、その距離に順応しようとします。その際、詳しいメカニズムは不明ですが、毛様体筋への負荷などが引き金となり、結果として近視が進行してしまうことが考えられます。

読書や宿題は学習に欠かせませんが、適切な距離を保ちこまめに休憩をとれば、近視が進むリスクを軽減できます。

子どもの近視は何歳から?6歳未満で発症するケースも

子どもの近視は主に学童期(6歳~15歳)に発症する場合が多く、年齢を重ねるごとに増える傾向があります。最新の学校保健統計(令和6年度)によると、裸眼視力1.0未満の割合は以下のとおりです。

  • 小学生:3割を超える
  • 中学生:約6割
  • 高校生:約7割

また、近年では近視の低年齢化が進んでおり、6歳未満で発症するケースも珍しくありません。就学前の幼児期に発症する強い近視は、遺伝的要因の影響が大きいとされています。

年齢が低いほど、近視の進行が速くなる傾向があります。近視の悪化を防ぐには、できるだけ早く適切な対策をとることが重要です。

子どもの近視を治す方法はある?

子どもの近視は、今は残念ながら治りません。代表的な近視の特徴と治療法を見ていきましょう。

関連記事:【眼科医監修】子どもの近視は治る?近視の原因と3つの予防策を解説

真性近視は眼球の奥行き(眼軸)が物理的に伸びてしまった状態で、自然にもとに戻ることはありません。一度伸びた眼軸は縮まないため、メガネやコンタクトレンズによる矯正が必要です。

また、近視になると将来的に以下のような合併症のリスクが高まります。

合併症 特徴
網膜剥離
  • 視界のなかに小さなゴミや光が見えるなどの症状
  • 進行すると視力の低下を引き起こす
緑内障
  • 視神経が障害されて視野が狭くなり、最終的に視力が落ちていく
  • 自覚症状がないことが多い
近視性黄斑変性
  • ゆがんで見えたり、視野の中心が暗くなったりする
  • 最終的に視力低下を招くことがある

とくに強度近視に進行した場合、これらの病気により失明する可能性もあるため注意が必要です。

現在の医学では近視を完全に治すことはできませんが、進行を抑える治療法は存在します。子どもの近視を悪化させないためにも、できるだけ早く眼科を受診することが大切です。

近視の進行を抑える代表的な方法

子どもの近視が進行するのを抑えるには、生活習慣の見直しだけでなく医学的な治療も有効です。現在はいくつかの治療法が用いられており、効果の程度や実施方法、対象年齢などが異なります。

近視の進行を抑える治療は以下のとおりです。

種類 治療法 特徴
メガネ 近視管理用メガネ※1
  • 2年間で55〜60%の進行抑制効果
  • 小さな子どもでも使いやすい
  • 負担が少なく続けやすい
コンタクトレンズ 多焦点ソフトコンタクトレンズ※2
  • 3年間で59%の進行抑制効果
  • 日中の視力矯正と近視進行抑制を同時に行える
  • 自己管理ができる年齢の子どもが対象
オルソケラトロジー※3
  • 2年間で32〜63%の進行抑制効果
  • 夜間に特殊なハードコンタクトを装用し、日中は裸眼で生活
  • 正しい処方と継続的な管理が必要
その他近視進行抑制法 低濃度アトロピン点眼液※4
  • 1年間で30〜70%の進行抑制効果
  • 1日1回就寝前に点眼するだけ
  • 副作用が少なく手軽
レッドライト治療法※5
  • 近視進行を約9割抑制するとの報告あり
  • 650nmの赤色光を1回3分、1日2回自宅で照射
  • 専門医の指導が必要

参照:日本近視学会「近視の進行抑制治療」

※1:近視管理用メガネは、海外では展開されておりますが日本ではまだ未発売になります。

※2:MiSightソフトコンタクトレンズは日本でも認可済み

※3:日本では近視進行抑制では未承認

※4:日本では認可済

※5:日本では未承認

上記の治療法は一定の効果が報告されており、子どもの年齢や生活スタイルに合わせて選択が可能です。

点眼液やメガネのように子どもでも取り入れやすい治療法もありますが、コンタクトレンズやレッドライト治療のように管理が必要であったり、適応年齢が限られたりするものもあります。

安全かつ有効に治療を進めるために、専門医の診察と定期的なチェックを受けながらおこないましょう。

まとめ

子どもの近視には遺伝と生活環境の両方が影響しています。両親が近視だと子どもの近視リスクは高くなりますが、遺伝があっても必ず近視になるわけではありません。

また、近年屋外活動の不足や近距離作業の増加により、近視の低年齢化が進んでいます。近視を放置すると将来の目の病気につながる恐れがあるため、早めに眼科を受診し、専門医の指導を受けることが大切です。

適切な治療を早期から始めて、子どもの目の健康を守っていきましょう。

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