お子さんの治療用メガネを作成するにあたって、活用できる補助金をお探しの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
対象は限られるものの、子どもの治療用メガネに活用できる補助金はあります。
本記事では、子どもの治療用メガネに活用できる補助金の対象条件や申請の流れを解説します。また、近視のお子さんでも活用できる可能性がある補助金・助成金制度の概要も紹介するので、メガネの購入代金を抑えたい保護者の方は最後までご覧ください。
1982年大阪大学医学部卒業。2019年より大阪大学大学院生命機能研究科特任教授に就任。小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。
子どもの弱視や斜視などの治療用メガネを購入するときは、医師が認めた場合に限り、国の「小児弱視等治療用メガネに係る療養費」を利用できます。
これは、治療用メガネの購入代金に対して、健康保険を適用できる制度です。そのため、治療用メガネの購入費(上限40,492円)の7割(未就学児は8割)が健康保険から支給されます。
制度概要は以下のとおりです。
| 制度 | 小児弱視等治療用メガネに係る療養費 |
|---|---|
| 対象年齢 | 9歳未満 |
| 給付対象 | 治療用メガネ(コンタクトレンズ)などの購入代金 |
| 条件 | 以下を医師が認めた場合
|
| 支給対象上限額 | 40,492円(※) |
| 支給額例 |
|
※ 2025年9月時点。上限額は厚生労働省の規定にもとづいて、購入代金(税抜)の100分の106に相当する額と決まっています。また、上限額は改正されることがあります。
残り3割または2割は自己負担ですが、自治体の「子ども医療費助成」の対象であれば補助を受けられます。
ただし、子ども医療費助成制度の所得制限によっては、自己負担分の補助を受けられない場合があります。所得制限の有無はお住まいの自治体によって変わるので、市区町村の公式ホームページをご確認ください。
ここからは、対象者や各種条件、メガネを実際に購入する流れを詳しく紹介します。
参考:「小児弱視等の治療用メガネ等に係る療養費の支給について」の一部改正について|厚生労働省
参考:●こども医療費●Q.14 子どもの治療用メガネは医療費助成の対象になりますか?|黒部市
この制度は、9歳未満の子どものうち、弱視や斜視、先天性白内障術後で、医師が治療用メガネを処方した場合に対象となります。
申請時は、以下の条件を満たしている必要があります。
なお、アイパッチやフレネル膜プリズム、近視・乱視・遠視用の一般的な視力矯正用のメガネの購入代金は対象となりません。
お子さんのメガネを作るケースとして多いのが、近視用メガネでしょう。
近視用メガネの購入代金に対しては、就学援助制度または障害者総合支援法による補装具費支給制度を利用できる場合があります。
この2つの制度条件に該当しない場合、近視や遠視、乱視などの視力矯正用メガネの購入代金に使える補助金・助成金制度はありません。
小児弱視等治療用メガネに係る療養費と子ども医療費助成の補助額は、以下のとおりです。
| 制度 | 小児弱視等治療用メガネに係る 療養費 |
子ども医療費助成 | |
|---|---|---|---|
| 支給割合 | 7割(未就学児は8割) | 3割(未就学児は2割) | |
| 支給対象上限額 | 合わせて40,492円(※) | ||
| 支給額例 | 就学児 | 就学児:28,344円 | 就学児:12,148円 |
| 未就学児 | 未就学児:32,393円 | 未就学児:8,099円 | |
※ 2025年9月時点。上限額は厚生労働省の規定にもとづいて、購入代金(税抜)の100分の106に相当する額と決まっています。また、上限額は改正されることがあります。
ここで、支給対象上限額内に収まった場合と、超えた場合の自己負担額をシミュレーションしてみましょう。
▼支給対象上限額内に収まった場合:30,000円の治療用メガネを購入したとき
| 種別 | 未就学児 | 就学児 |
|---|---|---|
| 小児弱視等治療用メガネに 係る療養費 |
30,000 × 0.8 = 24,000円 | 30,000 × 0.7 = 21,000円 |
| 子ども医療費助成 | 30,000×0.2=6,000円 | 30,000×0.3=9,000円 |
| 支給額合計 | 24,000 + 6,000 = 30,000円 | 21,000 + 9,000 = 30,000円 |
| 自己負担額(※) | 3,000円 | 3,000円 |
※ 購入代金の消費税分
▼支給対象上限額を超えた場合:50,000円の治療用メガネを購入したとき
| 種別 | 未就学児 | 就学児 |
|---|---|---|
| 小児弱視等治療用メガネに係る療養費 | 40,492 × 0.8 = 32,393円 | 40,492 × 0.7 = 28,344円 |
| 子ども医療費助成 | 40,492×0.2=8,099円 | 40,492×0.3=12,148円 |
| 支給額合計 | 32,393 + 8,099 = 40,492円 | 28,344 + 12,148 = 40,492円 |
| 自己負担額(※2) | 50,000 − 40,492 = 9,508円 9,508円 + 5,500円 = 14,508円 |
50,000 − 40,492 = 9,508円 9,508円 + 5,500円 = 14,508円 |
※2 上限を超えた差額(9,508円)と消費税分
補助金は、治療用メガネの購入代金の税抜き金額を基準とするところがポイントです。そのため、消費税分は自己負担になります。
なお、この制度は以下の条件を満たすことで、2回目以降の支給が認められています。
再支給時は、前回のメガネをいつ買ったかがわかる領収書などの提出が求められる場合があるので、申請時に確認しましょう。
申請時に必要な書類例は、以下のとおりです。
上記は、加入している健康保険組合や自治体によって異なる場合があります。例えば、調布市では上記に加え、子どもの検査結果が記載されている書類が必要です。そのため、健康保険組合や自治体の公式ホームページで詳細をご確認ください。
子どもの治療用メガネを購入する流れは、以下のとおりです。
購入するときは、あとで提出が必要になるため、必ず領収書を受け取ります。必要書類がそろったら健康保険組合や自治体の窓口や郵送などで手続きしましょう。
申請期限が決められているので、期限を過ぎないようご注意ください。例えば、調布市では、治療用メガネの購入代金を支払った日の翌日から2年以内と決められています。自治体によって期限が異なる場合があるので、確認してから手続きを進めましょう。
近視や遠視、乱視などの矯正用メガネの購入代金については、条件を満たすことで以下の補助金・助成金制度を活用できる場合があります。
就学援助対象者は、就学援助制度を利用して視力矯正用メガネの購入代金が補助される場合があります。
例えば、大和市では、就学援助の認定後に以下の条件を満たすことで、上限10,000円の補助を受けることが可能です。
裸眼視力0.6以下(片目)
(すでにメガネやコンタクトレンズで視力を矯正しているときは、矯正視力0.6以下(片目))
メガネ購入の流れは以下のとおりです。
「視力精密検査依頼書」と「めがね注文書」を受け取らずに眼科を受診したり、メガネを購入したりすると対象外になるため注意しましょう。
このように、就学援助制度の範囲のなかでメガネの購入を補助している自治体は多いので、対象者は調べてみることをおすすめします。
子どもが障害者手帳を持つ場合は、障害者総合支援法による補装具費支給制度を利用してメガネの購入代金の補助を受けられます。基本的に、視覚障害者用のメガネが支給対象です。
メガネの場合、矯正用は100分の110、遮光用と弱視用は100分の106が上限対象額とされています。矯正用に遮光用機能がついた場合は、100分の106となります。
手続きの流れは自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
子どものメガネを購入するときは、弱視や斜視などの治療用メガネの購入代金に限り、全国一律で「小児弱視等治療用メガネに係る療養費」という制度を活用できます。また、対象者は「子ども医療費助成制度」を併用できるため、子どもの治療用メガネの購入代金を抑えることが可能です。
近視や遠視、乱視などの矯正用メガネについては、「就学援助制度」と「障害者総合支援法による補装具費支給制度」を活用できる可能性があります。いずれも対象者が限られるので、一般的には利用できる制度はないと思っておいたほうがよいでしょう。
どの制度も、加入している健康保険組合や自治体によって、詳細が異なる場合があります。概要をつかんだあとは、必ずご自分で詳細を調べたうえで、子どものメガネを購入しましょう。